書評『サバイバル家族』著:服部文祥【地方移住したボクがワクワクする一冊】

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ゆーへーです。(@u_hey3185

この本は地方移住して半年のボクが最高にワクワクする一冊でした。

著者である服部文祥さん一家は横浜市在住。だが、その暮らしぶりは田舎暮らしそのもの。

奥さまである小雪さんが描いた自宅の全貌 服部文祥・著『サバイバル家族』より

ニワトリをヒヨコから育て、産んだ卵を食べる。
鶏が亡くなった、あるいは弱ってくれば文祥さん自ら絞めて鶏鍋にして家族でいただく。

山でシカが取れれば庭で解体してお肉を食べ、骨やスジ・雑肉は鶏のエサとなる。
そもそも鶏を飼いはじめるキッカケは鹿の骨やスジ・雑肉、それから野菜の切れっぱ等のいわゆる生ゴミの処理役でもあった。
鹿の脳みそを鶏に食べさせると3日後の卵が異様と言っていいほど濃厚になるらしい。

犬や猫・亀のカメちゃんも飼っている。
犬の『ナツ』は文祥さんが山へ行くときの良き相棒となる。

ここまではまだ動物の話。
この暮らしに服部家の家族が合わさるから更におもしろくなる。

本記事では、服部文祥・著『サバイバル家族』を紹介しています。
是非、読んでみてください。

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子どもとの関わり方

文祥さんの子どもとの関わり方は、ボク自身が見習いたい、マネしたいと思うことがたくさんありました。

なかでも1番は『元服人力旅行』。

元服とは昔の成人式みたいなもので、要は大人になったことを示す儀式のこと。
年齢で言うと、11〜16歳ぐらいのあいだ。

文祥さんは小5〜中1の間に子どもたち一人ひとりと一週間ほどの旅に出ます。
沖縄の安宿を転々としながらチャリ旅をしたり、北海道の山小屋に泊まりながら狩猟したり。

長男編・次男編・末っ娘編の3部作が本に散りばめられていて、どれもおもしろくて読んでいてめちゃくちゃワクワクします。

長男と初めて登山に行くときはこんな考えをしています。

だから登山に先立ってまず、大山がきれいに見える近所の公園に行き、「あの山のてっぺんまで行ってみないか?」と誘ってみた。
(中略)
じゃあ行こうとなった後も、大人の都合で振り回すのではなく、予定日に天気と体調とやる気が、ちゃんと揃ったら初めて出発と決めていた。登山とは「大人に連れて行かれるもの」と思われたくなかった。計画は細かいところまで詰めておくのだが、決定はせず、子どもにはそれとなく予定日を行っておく程度で、最終決定は当日の朝にする。首尾よく出発しても、途中で嫌になったら、いつでも引き返す。

服部文祥・著『サバイバル家族』(中央公論新社・2020年)

登りはじめてからはこんなひとコマも。

大山阿夫利(あふり)神社を過ぎ、小一時間ほど登ったところで祥太郎がもう疲れたと言い出した。山頂まではあと小一時間ほどだろう。基礎体力はあるほうだし、顔色も悪くない。退屈なので、ちょっとゴネてみたという感じだ。「ここで帰ってもいいけど、もうちょっとだけ行ってみようぜ」とやんわり提案した。辛い思いをして、山登りが嫌いになって欲しくはないが、長時間かけて何かを成し遂げるという達成感のようなものも経験して欲しかった。

服部文祥・著『サバイバル家族』(中央公論新社・2020年)

至るところに文祥さんと子どもたちとのことが書いてあり、そのどれもが、子どもたちと向き合い、対等な関係を築こうとしているような気がします。

食の考え方

随所に食への考え方が書かれています。
ボクが特に印象的だったのは次の箇所。

安っぽいものーーーたとえば配合肥料で無理矢理太らせた家畜や農薬たっぷりの無機栽培野菜ーーーを食べていて、健康的な身体ができるわけがない。ところが日頃の生活で、われわれはそれをあまり意識していない。良くない物質が混じっていたり、ぶよぶよして美味しくないとわかっているのに、目先の損得勘定だけで、「安い」ものを喜んで購入して食べている。安い食品を選んで出費をセーブするとは、自分の未来の健康を売っているのと同じなのかもしれない。

服部文祥・著『サバイバル家族』(中央公論新社・2020年)

ハッとさせられます。

本作にも登場する英語のことわざに、”You are what you eat.” = あなたはあなたの食べたものでできている。という言葉があります。
(本作では「You are what you ate(あなたはあなたの食べたものに他ならない・英語圏の言い回し)」と表記されてます。)

ボクが毎日食べているものは果たして『美味しい』ものなのか。
ボクらの子どもが毎日食べているもので健康的な身体ができるのか。と考えさせられます。

服部文祥ワールド

第2項(P13〜)は29年前にさかのぼって奥さまの小雪さんとの馴れ初めが書かれています。

正直、『え、そっから書いてあんの!?』と思いましたがとんでもない。

急激に物語に引き込まれます。

以前、小雪さんがインタビューで【服部文祥は漫画的なひと】と表現したことがありますが、まさにその通り。
純粋でかっこいいんですよね。

子どもにも動物にも山にも食に対してもすごく純粋に向き合ってる気がします。
そこに文祥さんの表現力が合わさるのでグイグイ読ませてくれます。

ほんとうにおもしろい作品です。
是非一度、読んでみてください。

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