書評『山の仕事、山の暮らし』著・高桑信一【滅びゆく山びとを活写した名著】

目次

ゆーへーです(@u_hey3185

この本は山に暮らす人々とその仕事を紹介すると同時に、後継者がおらず失われゆく山の仕事や高齢により山を降りざるをえない人々の生き方が描かれています。

滅びゆく”山の仕事、山の暮らし』とも取れるような内容です。

ただ、ネガティブな感情だけが生まれるわけではないんです。
むしろ山にはこんなにも仕事があるんだ!とワクワクしながら読めました。

本記事では、高桑信一さんの代表作『山の仕事、山の暮らし』を紹介します。

目次

19名の山びとたち。

この本は19名の山びとたちの仕事や哲学、暮らし方などをまとめた短編集です。
写真も多くてサクサク読み進めることができます。

仕事の種類は多岐にわたり、
・猟師
・ゼンマイ採り
・漆採り
・山岳救助隊
・山椒魚(サンショウウオ)採り
・蜂飼い
・炭焼き
・写真家
・天然氷職人
と本当にさまざま。(まだあります。)

山間の町に移住したボクからすると、
山にはこんなにもいろんな仕事があるのかと嬉しくなりました。

もうなくなってしまった山小屋。
すでに亡くなってしまった山びとたち。

この本は1990年代から10年近くに及ぶ取材をまとめられたもの。
登場する山びとたちも50代〜80代の方々。

詳しくはわかりませんが、おそらく半数近くの方がすでに亡くなられており、ほとんどの方が山を降りていると思われます。

ネガティブにならないにしても、
本書に登場する場所や人を一眼見てみたかった…という思いはあるのが正直なところです。

たとえば、峠の茶屋で岩魚の塩焼きを売っているご主人のおはなし。

「うちは四面焼きなんですよ」
「前と後ろで二面。ほかならそれで焼きあがりでしょうが、うちはさらに左右両面で四面。そこまで焼くと、頭から食べられる岩魚が焼きあがるんです」

(中略)

焼きあげるのに、一時間十分から二十分はかかる。かならず前、つまり腹のほうから焼く。そうするとまず腹が開き、内側から籠った熱が岩魚の全身にいきわたる。それから裏返して背を焼き、さらに火から遠ざけて左右両面に火をあてる。絶対に焦がせてはならない。

(中略)

「ほかじゃあ、濡れた新聞紙を被せて焼くといい、なんてやってるようだけど、あれは焼いてるんじゃなくて蒸しているようなもんだと思うんだけどねぇ。旅もするから、いろんなところで食べてみるけど、ちょっとひどいのが多いね。お客さんの身になったら、迂闊なものは出せません」

『山の仕事、山の暮らし』P26 〜南会津の峠の茶屋〜 より抜粋

このこだわりよう。
こんな岩魚、一度でいいから食べてみたいですよね。

しかし、この「峠の茶屋」は2005年に廃業しており、もうありません。

会いに行きたい

この本を読んでいると心底そう思います。

ボクの場合、一章読み終えるごとに
『この山びとは今も生きているんだろうか?』とネットで調べるようになっていました。

ですが、ほとんどが一般人のため、正確な情報など載っているはずもありません。

おそらく5名くらいの方は生きておられると思います。

そのなかでも、間違いなく生きているのはボクと同じ山形県小国町にお住まいの『関 英俊』さんです。(第16章 P286〜)

ボクのなかでは【地方移住・山登り・狩猟】と、どれをとっても大・大・大先輩です。

近々、会いに行かせていただければと思っています。

ボク自身、山菜採りや獣狩りをします。
山の恵みをいただく者として、彼らに恥じぬような暮らしをしたいと思いました。

ぜひ一度、読んでみてください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次